社会問題化する養育費不払い、離婚後子どもと暮らす女性の半数が経験
「金の切れ目が縁の切れ目」、ならぬ「縁の切れ目が金の切れ目」と言わんばかりに、離婚後に子どもの成長に不可欠な養育費が離支払われなくなる「養育費の不払い」が多発し、社会問題化している。
そんな「養育費不払い問題」についてこのほど、弁護士ドットコムにより、オンライン法律相談サービス「みんなの法律相談」のユーザーを対象にした意識調査が行われた。
養育費の受け取り 「金額の減少や支払いに滞り」離婚後子どもと暮らす女性の半数が経験
離婚経験があり子どもがいる女性のうち、子どもと暮らし、養育費を受け取る立場にある女性は93.9%、受け取る立場にない女性は6.1%だった。
「不払い問題が発生したか」との質問に対して、受け取る立場にある女性の回答を分析したところ、「満額の支払いではない」もしくは「支払いが定期的でない」など、「養育費の受け取りに何らかの支障があった」と回答したのは53.8%だった。その中で、一番多かったのは「途中から受け取れなくなった」(22.4%)という結果に。
「その他」に含まれる回答のうち、受け取りに支障があったという回答では、「一年に一回支払いが遅れる」「たまに止まっている」「勝手に減額された」などの意見が聞かれた。
また、養育費を受け取る立場にある男性(調査対象の男性216名)は7.9%で、全員が「養育費の受け取りに何らかの支障があった」と回答している。
離婚時の養育費 8割が「取り決めを行った」と回答
「離婚時に養育費の取り決めをしたか」尋ねたところ、「取り決めをした」(71.4%)と「弁護士や家族、知人などから教えてもらい、取り決めをした」(12.3%)合わせて、全体の8割以上が取り決めをしていた。
養育費体験談「すぐに減額調停された」「おやつ代程度の金額」などの声、寄せられる
「養育費にまつわる体験談」を自由記述形式で聞いたところ、体験談だけでなく、養育費制度への疑問や今後の制度のあり方に関する意見など、254件の回答が寄せられた。その一部を、抜粋して紹介していく。
■養育費の受け取りや支払いについて
【受け取る立場】
・相手方の居場所は分かっているが、かなりの資料や証明を集めないと取り立てができない ので、結局泣き寝入りしている。
・先方の長年の不貞行為で公正証書を作って離婚したが、半年後に減額調停をされて、高裁まで行った。判決は勝ったが、支払いは行われていない。 先方が神奈川から大阪に引っ越したため、大阪地裁で財産開示命令が出たが、まだ動きがない。未払い額は400万ある。
・支払い遅延が発生したので「強制執行を検討する」と伝えたら名誉毀損で訴えると脅され、月末に再婚したら、「その月の1か月分は支払わない」と言われた。
・養育費は、受け取る側が損する気がしてならない。
【支払う立場】
・離婚していても、扶養しているものだと思えば養育費の支払いに抵抗はない。
・養育費(婚姻費用)を得るために、配偶者がわざと仕事をしないケースだった。
・今はコロナ禍の影響で収入が減少し満額を払えないが、それでも子どもの成長や生活が気 になるので、毎月必ず払っている。
・養育費を支払っているが、面会交流は一度も実行されていない。養育費義務化によってそのような事例が増えるのではないか。
■養育費の額について
【受け取る立場】
・調停中で私学に通う子どもがいるため、事情を説明して養育費の分担を願い出たが、先方が全く応じず、話し合いにもならなかった。調停では改定算定表が使われたが、あまりに金額が低い。子どもの生活や教育を軽視しているのかと感じてしまった。周囲の助けを得つつ私は粘っているが、これが完全に母子二人きりだったら、心身を消耗して諦めてしまうと思う。子どものために母親が擦り切れなくてもいいように、住居費や教育費などの事情をより反映した算定表、そして、調停委員や裁判官の判断を切望する。
・自営業の元夫が偽の給与明細を提示し、養育費が減額になった。
・大幅な減額に応じざるを得なかった。話し合いができる相手ではなく、増額調停をするにも、弁護士費用がかかるので我慢している。
・未成年の子ども一人につき月額5,000円で、4人いたため月2万円の養育費だった。子どものおやつ代程度で到底足りず、生活は苦しかった。
【支払う立場】
・取り決めをした金額よりも多く支払っている。日々の生活ではこと足りる金額ではあるが、子どもの将来のことも含め、同居親を信頼して多く支払っている。
・妻は専業主婦で、こちらはローンの支払いがあり手元に残る金額が少ない状況なのに、算定表上は年収で計算されるため、生活が苦しかった。会社が潰れて収入が減り、一時的に支払いを待ってもらう交渉をしたが、却下された。
■養育費に関する意見
【受け取る立場】
・途中で相手方が連絡もなしに不払いになった。その後、「病気で退職して働けない」と養育費免除の調停を申し立ててきて、養育費がゼロになった。しかし、実際は、その2か月後に相手方は就職していた。わたしは就職したことを知らず、1年半も養育費ゼロのまま生活していた。相手方が嘘をつけば養育費を支払わずにいられる現在の制度はとても不公平である。収入が増えたり、再就職した場合に養育費を支払わないと懲役や罰金刑など、何かしらの刑罰を与えるべき。
・元夫が調停に出てこなかったため、養育費の取り決めが出来ず、1人目の子どもはもう高校生になった。今まで母子家庭で苦労しながら育ててきた。今まで支払って貰えなかった分を、後から分割でも支払ってもらえるような制度を作って欲しい。そうなれば、子どもの将来のためにもなると思う。
【支払う立場】
・養育費の支払額が、1年前の年収を元に決められてしまう。会社から交通費が出ているかどうかやローンやその他の支払いがあるかどうかなど、人によって状況は違うはずなので、年収だけでなく状況によって金額を決めてほしいと思う。老後の事を考えると不備だらけだと思うし、いちいち調停など出来ない。支払額を年更新する形にするなど、その時々の状況によって、自動的に金額が変わるような仕組みがあったらいいなと思う。
・あくまでも当事者同士のやり取りとなり、支払う側の収入の状況によって受け取り額が変動するため、仕組みとして安定性に欠ける印象。第三者機関を設立し、双方がその機関を通じて支払う・受け取るなどすることで、「安定した受け取り」ができるような仕組みになることを切に願う。
■まとめ
養育費の受け取りに支障があるケースでは、「相手方の所在地や勤務先が不明で、強制執行ができない」「差し押さえ手続きが煩雑で泣き寝入り」「強制執行したいが、弁護士費用がネック」などの声が聞かれた。また、受け取り額については、「取り決めはしたが、支払いが開始されてすぐに減額調停を申し立てられた」「自営業で所得を少なく申告され、受け取り額が少ない」「連絡なく、勝手に減額された」といったケースが多いようだ。
一方で、養育費を支払う立場からは、「養育費が生活費を圧迫していて支払いが厳しい」「その年の年収によって、都度支払額を変更する形にしてほしい」「生活が苦しくて減額を申し入れたが、取り合ってもらえなかった」など、養育費の支払いに負担感を訴える声が多く聞かれた。
さらに、一部「養育費を支払っても、面会交流させてもらえない」との声もあった。(法律上、「養育費」と「面会交流」は同時履行※の関係にはない)
養育費を受け取る側と支払う側の双方が安心して生活できるように、新たな仕組みや制度の整備が望まれる。
※同時履行とは、こちら側と相手方にそれぞれ違う債務があり、相手方が債務を実行すれば、自分も債務を実行することを指す。
<調査概要>
調査方法:「みんなの法律相談」登録ユーザーにメールで実施
調査対象:2,269名から回答が得られ、その中から、離婚経験があり子どもがいる430名
(男性216名、女性214名)を対象に分析
調査期間:2021年2月17日〜22日
※原則として小数点以下第2位を四捨五入し表記しているため、合計が100%にならない場合がある。
※弁護士ドットコムが運営する「みんなの法律相談」は、無料で弁護士に相談できるオンラインQ&Aサービス。2021年3月までの相談実績は100万件にのぼり、弁護士が投稿された相談に回答し早期解決に導く、日本最大級の法律相談ポータルサイトだ。
出典元:弁護士ドットコム株式会社
構成/こじへい
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