これまで70歳まで繰下げ受給ができていた年金制度。が、75歳までと受給開始年齢が拡大されました。繰り下げることで、最大84%も支給額が増額されるといいます。本当にお得なのでしょうか。フィナンシャルプランナーの長尾義弘氏が著書『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春新書)で解説します。
1か月で0.7%増、1年後には8.4%増!
■年金って、65歳になったら自動的に支給されるんじゃないんですか!?
――年金を増やす方法はいろいろあるそうですが、長く働く、給料を上げることのほかに、まだ何か秘策がありますか?
長尾FP はい、あります。説明する前に、ひとつお聞きしますが、年金は何歳から受け取ることができるのかご存じですか?
――もちろん、知っていますよ。65歳からでしょう?
長尾FP 多くの人はあなたのように、年金は65歳から受給されるものだと思っているようです。これは大きなかん違いなんですよ。
あなたが思っているように、通常は65歳から年金を支給します。
しかし、じつは60歳から70歳までの間なら、いつ受け取りを開始してもかまいません。2022年4月には年金制度改正法が施行され、受給開始期間がさらに75歳まで延長されます。
通常の支給開始時期である65歳よりも前に受け取ることを繰り上げ受給、66歳以降に受け取ることを繰り下げ受給といいます。年金を増やせるのは、受け取り開始を遅らせる繰り下げ受給です。
なお、いったん受給をスタートしたら、途中で変更することはできません。
――全然、知りませんでした。繰り下げ受給をすると年金が増えるというのは、どういう仕組みなんでしょう。
長尾FP 65歳のときに受給を開始しないで、66歳以降に受け取るようにすると、1か月につき0.7%ずつ年金が増えていきます。たったのそれだけ?と思う人が多いかもしれませんね。一見、小さな積み重ねのようですが、計算してみると非常に大きいことがわかります。
1か月で0.7%増なら、1年後には8.4%増えることになります。70歳まで繰り下げると、何と42%も多くもらえるようになるんですよ。
――わたしの場合、年金の見込み額は月15万円なので、計算すると……21万円を超える! この金額を70歳以降、ずっともらえるということですよね。
長尾FP そうです。繰り下げ受給は本当にお得なんですよ。
ただ、65歳からの5年間はもらわないので、トータルですぐにプラスになるわけではありません。
65歳で開始した場合とトントンになる損益分岐点は81歳11か月。それ以降、死ぬまでの長い間、毎回の受給で42%分がまるまるプラスになるというわけです。
もちろん、損益分岐点の前に寿命が来てしまうと、損をすることになります。とはいえ、現在の平均余命で計算すると、いまの50代男性なら83~84歳あたりまで生きるので、得をするケースのほうが多いでしょう。
一般的に男性よりも長生きをすることの多い女性は、もっとプラスになるはずです。平均寿命はこれからまだ延びるでしょうから、男女ともに得をする期間は一層長くなっていくことでしょう。
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連載「老後の資金」がありません。どうしたらいいですか?
本連載は、長尾義弘氏の著書『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。
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