イギリス王室のチャールズ皇太子が2013年に、サウジアラビアの富豪ビンラディン一族から100万ポンド(約1億6000万円)を受け取っていたと、英日曜紙サンデー・タイムズが7月30日に報じた。
サンデー・タイムズによると、オサマ・ビンラディン容疑者の異母兄2人は2013年に、チャールズ皇太子のプリンス・オブ・ウェールズ慈善基金(PWCF)に、100万ポンドを寄付した。オサマ・ビンラディン容疑者は過激派勢力アルカイダの創設者で、2001年9月11日の米同時多発テロの首謀者として2011年に米軍に殺害された。
皇太子の居宅で公務を管理する英王室クラレンス・ハウスは、この寄付を受け取るにあたり「万全な信用調査」を行ったとPWCFから保証されていることを、BBCに明らかにした。
「まるでそうではないかのように語ることは、まったく事実と異なる」と、クラレンス・ハウスはBBCに話した。またサンデー・タイムズ記事の内容には、自分たちの認識と異なる点が複数あるとも述べた。
ビンラディン一族は1994年にオサマ・ビンラディン容疑者と縁を切っている。チャールズ皇太子に寄付をした兄たちが、アルカイダの活動にかかわっていたと示す情報はない。
サンデー・タイムズによると、チャールズ皇太子はクラレンス・ハウスで、ビンラディン一族の家長バクル・ビンラディン氏と面会した後、バクル氏とその弟のシャフィク氏から寄付を受け取った。同紙は複数の消息筋の話として、クラレンス・ハウスやPWCFの顧問が反対したにもかかわらず、皇太子が寄付金を受け取ったと伝えている。
これについてPWCF会長のサー・イアン・チェシャー会長は同紙に対して、2013年の寄付は基金の当時の理事5人が「慎重に検討」した末、同意したと述べ、「政府を含め多岐にわたる消息筋から情報を得て、信用調査を行った」と話している。
PWCFはイギリスで登録している非営利団体による英連邦や海外での慈善事業に、助成金を提供する。
PWFCの関係者はBBCに対して、「ビンラディンの名前には不幸な歴史が伴うが、1人の罪が一族全員の罪になるべきではないし、中東地域ではビンラディンは高名な名前だ」と話した。この関係者は、2013年の寄付は外務省の了承も得ているとも述べた。
チャールズ皇太子とその慈善団体が寄付金をめぐり、注目されるのは初めてではない。
サンデー・タイムズは6月には、皇太子が2011年から2015年にかけて、カタールの元首相から現金100万ユーロ(約1億4000万円)の入ったスーツケースを受け取っていたと報じている。
クラレンス・ハウスは報道当時、皇太子が元首相から受け取った寄付金はすべて適正な手続きを経て、王子がかかわる慈善団体へ支払われたと説明している。
独立行政機関「チャリティー委員会」(公益活動を行う団体の登録、指導監督などを担当)は7月、カタール元首相からの寄付について調査する必要はないとの判断を下している。
さらにこれとは別に、チャールズ皇太子がかかわる慈善団体の寄付をめぐっては、寄付をしたサウジアラビア人にイギリス市民権と勲位が与えられたという疑惑が浮上しており、資金の流れが注目されている。
ロンドン警視庁は今年2月、爵位や勲位の売買を禁止する1925年の法律に沿って、皇太子の慈善基金に関する疑いを捜査する方針を示している。慈善基金はこの捜査に全面協力しているとされる。
クラレンス・ハウスはこれまでに、自分の慈善団体への寄付が誰かへの叙勲や市民権付与につながったことがあるなど、皇太子は承知していないとコメントしている。
<解説>ジョニー・ダイモンド王室担当編集委員
ルール違反も法律違反も起きていない。適切な確認作業が行われ、外務省の意見まで求められた。そして外務省は、問題ないと判断している。
ではなぜこれが新聞第一面に載るほどのニュースなのか。
PWFCの関係者はBBCに対して、オサマ・ビンラディン容疑者1人の罪を理由に、一族全員の寄付が禁止されるべきではないと話した。それは確かにそうだ。
しかし同様に、チャールズ皇太子はその側近たちは本当に、ビンラディン一族から金銭を受け取るのが、賢明なことだと考えたのだろうか? それとも、表ざたにさえならなければ大丈夫だと思ったのだろうか?
というのも、どれだけ確認を重ね、どれだけルールを守ったとしても、いったん公表されてしまえば、イメージは最悪だからだ。
カタールの元首相から巨額の現金を受け取っていたことも同様。高額の寄付を約束して、実際に寄付したサウジアラビア人に、皇太子の親友でもある顧問が、ナイト爵位を手紙で約束していたことも同様。
閣僚や議員は結局のところ、有権者の意によって動く。王室はその地位と権威を、別のよりどころから得ている。つまり王室は総じて国に恩恵をもたらすと、国民が納得しているからこそ、王室の地位と権威は成り立っているのだ。
勘当された息子の悪行と、一族がどれだけ無縁だとしても、ビンラディン家から寄付金を受け取るという行動は、こうした王室の在り方に見合うのだろうか。
<解説> フランク・ガードナー安全保障担当編集委員
数千万人ものサウジアラビアの人たちにとって、「ビンラディン」の名前は、まったく無害だ。しかし、欧米をふくめ世界の大半では、永遠に2001年9月11日の米同時多発テロと結びついて記憶される。
しかし、サウジアラビアで「ビンラディン」と言えば、ジェッダを拠点にする建設会社のことで、原油で得た巨万の富をもとにした王家の依頼で寺院や宮殿などの建物を次々と建てた会社を意味する。
一族はもともとサウジ出身ではなく、イエメン南部のハドラマウトが故郷だ。ジェッダで成功した多くの裕福な起業家一族が、ハドラマウト出身だ。
20世紀初めにイエメンからサウジアラビアへ移住し、建設会社を興した創業者には多くの息子が生まれ、その1人がオサマだった。彼には「一族の黒い羊」との悪評が長年つきまとっていた。
オサマ・ビンラディンは1980年代のほとんどをアフガニスタンで過ごし、侵略してくるソ連軍に抵抗するためのムジャヒディーン結成にかかわった。要するに当時の彼は、米中央情報局(CIA)やパキスタンの側にいたわけだ。
しかし1990年代にもなると、過激なイスラム原理主義者となり、1994年に一族から勘当された。その後はスーダンへ渡り、続いて間もなくアフガニスタンに戻り……その後のことは、歴史に刻まれている。
からの記事と詳細 ( チャールズ英皇太子、ビンラディン一族から100万ポンド受け取る=英報道 - BBCニュース )
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