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Sunday, August 2, 2020

世界遺産に陶磁器のジョルナイ 豊かな地方都市ペーチ ハンガリー - https://ift.tt/2KYtf1P

ツアーの行き先としてはメジャーでないけれど足を運べばとりこになる街を、ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが訪ねる「魅せられて 必見のヨーロッパ」。今回は、2019年10月に出かけたハンガリー南部・ペーチへの旅です。陶磁器の名ブランド「ジョルナイ」の本拠地としても知られる街です。

ブダペストからICで3時間弱

今月からは、ハンガリーのとっておきの町を紹介します。今回はブダペスト東駅から都市間鉄道インターシティー(IC)に乗り、南南西へ200km余り、クロアチアとの国境に近いぺーチへ旅しました。

ペーチは日本での知名度は低いようですが、国内で5番目に人口が多く(約15万6千人)、ローマ帝国時代には重要な都市でした。世界遺産に登録されている「ペーチの初期キリスト教墓所」、ジョルナイの工房などを訪ねました。

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ブダペスト東駅のプラットホーム

ブダペスト東駅は、ノスタルジックで堂々とした駅です。ここからICでペーチまで、約2時間45分の列車の旅です。

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ペーチ駅構内

ペーチ駅に到着しました。一緒に下車したのは10人程度で静かな駅ですが、壁にはジョルナイのタイルが貼られ、あか抜けた雰囲気です。

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ペーチ駅の外観

駅舎の外壁もジョルナイ陶磁器のタイル。

駅から街の中心となるセーチェーニ広場へ歩きました。徒歩で15分ほど。町なかでは、若い人が目立ちます。ガイドのスージーさんに聞いてみると、大学があり学生数は2万人とか。

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ミーティングポイントにもなっているセーチェーニ広場

ハンガリーを旅すると各地でセーチェーニという名がついた場所に出会います。セーチェーニとは、ハンガリーの貴族で政治家のセーチェーニ・イシュトヴァーン(1791~1860)のことです。ハンガリーの経済発展や文化に貢献し、偉大なハンガリー人と呼ばれます。たとえば、ブダペストには有名なセーチェーニ鎖橋のほか、セーチェーニ国立図書館セーチェーニ温泉が。この連載で紹介したショプロンにも、セーチェーニ高校やセーチェーニの立像があります。ショプロン近郊のナジツェンクには、広大な庭園に囲まれた邸宅であるセーチェーニ宮殿もあります。

世界遺産のカタコンベへ

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「ペーチの初期キリスト教墓所」の入り口 

世界文化遺産「ペーチの初期キリスト教墓所」を訪ねました。入口は小さくて目立たないですが、中へ入ってみるとかなり広くて一見の価値ありです。

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礼拝堂


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墓所

ペーチはローマ帝国時代にソピアネと呼ばれ、商業都市として栄え、宗教的にも需要な都市でした。4世紀には初期キリスト教の建造物が数多く建てられ、その一つがこの遺跡。
案内して下さったダニエルさんは「ペーチの地下にはこうしたカタコンベ(地下墓所)がいくつか点在しています。広さは、今案内している墓所だけで約1800平方メートルあります」と言います。

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壁画がかなり明確に残っている部分

迷路のように続く階段や透明なパネルの廊下を歩きます。アリの巣のように地下墓所が広がり、石で堅牢に組まれた壁や天井を見て、当時の建築技術の高さを実感します。

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大聖堂

遺跡のほぼ上の地上には、4本の尖塔をいただく大聖堂がそびえています。大聖堂の地下の礎石とその壁の部分もローマ帝国時代の4世紀に造営されました。

大聖堂広場に向かって左側にある、司教の館へ入りました。

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司教の館の内部

美しい調度品に囲まれて宮殿のように広く、贅(ぜい)を尽くした館です。今も司教が暮らしているそうです。キリスト教における司教の地位の高さと権威を感じさせます。1991年にはポーランド出身のローマ法王ヨハネ・パウロ2世がこの街を訪問し、地元の信者はそれを今も誇りにしています。

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リストが立った司教の館のバルコニー

ガイドのスージーさんによれば、1845年には作曲家でピアニストのフランツ・リストが司教の館を訪問。市民は広場に集まり大歓迎し、リストはこのバルコニーから手を振って応えたそうです。

巨大な街「ジョルナイ文化の街角」へ

ジョルナイの工房や美術館がある「ジョルナイ文化の街角(Zsolnay Cultural Quarter)」へ向かいました。

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「ジョルナイ文化の街角」の入り口

中へ入ると公園のようで、敷地は5haあります。歩いてみるとまさに街です。

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「ジョルナイ文化の街角」の建物の一つ

この建物の屋根は、どこかの大聖堂を思わせませんか? そうです! ウィーンのシュテファン大聖堂の屋根は、ジョルナイ製なのです。ブダペストの地下鉄一号線の駅構内にもジョルナイのタイルが貼られています。

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工房の作業風景

庭園はもちろん、工房やミュージアム、ショップなど4時間余り見学しましたが、すべては見られませんでした。私のようにあくせくせずに、子供連れで庭園を散策したり、カフェで休んだり、ゆっくり一日過ごすのがお薦めのようです。ちなみに訪問者数は年間20万人を超えるとか。

コスパのよいレストラン

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レストラン「Bloff Bisztro」

歩き疲れて、レストランへ。地元の人に薦められた、セーチェーニ広場に近い「Bloff Bisztro」へ。パラソルの下で、遅いランチを楽しみました。

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チキンのパプリカソース、小麦の小さなダンプリング添え

クセのない自然なチキンの味わいとパプリカの風味が、メリハリのあるおいしさです。ダンプリングはまさに、ドイツやオーストリアの郷土料理であるシュペッツレにそっくり。ペーチのあたりは歴史的にドイツ、オーストリア、ルーマニアなどとのかかわりが強いので、食文化もその流れがあるのだろうと想像しました。

何を注文するかにもよりますが、料理、ワイン、デザート、コーヒーで、日本円にして1700円程度でした。ハンガリーの地方都市はブダペストに比べると宿泊も食事もすべてリーズナブルで、質も高いです。コスパがよいですね。

大都市とは異なり、地元の人たちの日常生活に触れやすいのも地方都市の魅力です。

駐日ハンガリー大使館
https://tokio.mfa.gov.hu/jpn

駐日ハンガリー大使館観光室
http://www.hungarytabi.jp

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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