年収3割減、役職定年、賞与カット――。コロナ禍や働き方改革による大波が、年収1000万円プレーヤーたちの家計を直撃している。特集『年収1000万円の大不幸』(全13回)の#2では、収入減少でも生活水準をなかなか切り下げられず、苦悶する人たちの「転落劇」に迫った。(ダイヤモンド編集部 相馬留美、中村正毅、山本興陽) 【この記事の画像を見る】 ● 離婚と役職定年がもたらした家計の危機 「10年前に財産がいったんリセットされたんですよね」 大手メーカーに勤める田中和夫さん(仮名、60歳)は、バツが悪そうにそう話す。 年収は1000万円を超えているが、新入社員の頃から連れ添った妻と50歳のときに離婚したため、貯金が心もとない。 元妻は専業主婦。就職して間もなく結婚したため、ためていた現金と持ち家を財産分与で相手に持っていかれてしまった。 しかも、老後に支給される自分の厚生年金の半分が、元妻の懐に入る。年金として自分が受け取れるのは、月に数万円程度だ。 退職金を年金払いに切り替えて生活費に充てる腹積もりだが、生きている間に会社が倒産したらと思うと不安でならない。 今は若い女性と再婚して子どももいる。後妻は子どもに私立中学校を受験させるつもりだ。教育費が今後膨らむのも恐ろしい。
● 眼前に迫る年収激減の厳しい現実 後妻も専業主婦だが、田中さんはあと5年で定年を迎えるため、本当は働きに出てほしいと思っている。 妻はアジアのある国の言語に通じているため、「定年後はその国と貿易をして稼ごう」と持ち掛けている。だが、「あの国の金持ちにはろくな人がいないから関わりたくない」とけんもほろろだ。 現在の家族と住んでいる家は、銀行からフルローンで借りて購入した。貯金はなかったので頭金すら入れられなかったが、収支明細を持っていって「こんなに収入があるんだ」と高年収をアピールし、なんとか金利を下げさせたという。 今年5月に役職定年を迎えて年収が激減し、冬のボーナスは半額になるといううわさが聞こえてくる。どうやら今年は年収が700万円程度まで、前年よりも3割以上激減する見込みだ。 「最近はもう、子どもたちには『うちにはお金ないから』と言うようにしていますよ」と、田中さんは乾いた笑いを浮かべる。 ● 緊急事態宣言で売り上げが約3割減 接骨院経営者はFXで年収補填を図るが… 「お客さんが終日ゼロのときもあって、本当にどうなってしまうのかと不安になりましたね」 中部地方で接骨院を経営する佐藤一郎さん(仮名、46歳)は、コロナ禍によって政府が緊急事態宣言を出した当時のことをそう振り返る。 4月と5月は前年同月比で売り上げが3割近く減った。国の持続化給付金に期待を寄せたものの、事業収入が50%以上減少という条件を満たさず、結局申請できずじまいだった。 10月に入っても接骨院の客足は完全には戻っておらず、微減の状況が続いているという。昨年の年収は1100万円だったが、今年は900万円台にまで落ち込みそうだ。 佐藤さんは手の空く時間が増えたことで、アウディA5を売って得たお金を元手にし、外国為替証拠金取引(FX)を始めている。目減りする収入を、少しでも補えればという思いからだった。 過去に参加したFXの無料セミナーで基礎は学んでおり、自信を持って今夏にドル円の買いを入れた。ところが相場が荒れ、すぐに数十万円の含み損を抱えてしまい、背筋が寒くなったという。 次男が高校受験を控える中で、まずは経営を安定させることにしっかりと目を向けなければと思い直し、日本政策金融公庫のセーフティーネット貸付を利用して、運転資金を融資してもらう手続きを今は進めている。 同じ1000万円プレーヤーでも、外資系企業の社員は雇用への不安を口にする。
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