探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウから持ち帰ったカプセルを無事、地球に届けた。
6年間52億キロにわたる旅は、担当チームが「100点満点で1万点」と評した通り、完璧だった。高い精度での2度の着陸に加え、人工クレーターを造って地中の物質を採取する難業もやり遂げた。快挙をたたえたい。
これらを含め七つもの「世界初」を達成したはやぶさ2は、別の小惑星へと向かっている。トラブルに見舞われた初号機の教訓が存分に生かされた。
カプセルは着地した豪州から日本に運ばれた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で開封され、国内外で詳細な分析が始まる。46億年前に太陽系が誕生した当時の様子や、地球に生命がもたらされた謎に迫る発見が期待される。
成功を支えたのは、若い世代の底力だ。チームを率いる津田雄一さんは39歳の時に抜てきされた。ベテラン陣のアドバイスを取り入れながら、徹底的な議論と訓練を繰り返して失敗の芽を摘んだ。
初号機の奮闘に刺激されて加わったメンバーもいる。今回、はやぶさ2の活躍を見守った子どもたちや大学生から、研究者や技術者を志す若者が出てくるだろう。
長期的な視点に立った着実な投資が必要だ。挑戦の機会が増えることで人材が育ち、日本の実力の底上げにつながる。
日本の宇宙関連予算は3000億円あまりで、欧米に比べ、けた違いに少ない。有人計画も含めた資金確保が課題となる。
はやぶさ2のミッション成就は異分野協働のたまものでもある。
太陽系の成り立ちを知りたいという理学研究者の知的好奇心に工学の専門家が全力で応えた。それを民間企業の技術者たちが独創的な機器を開発して支えた。
地球以外の天体から試料を持ち帰る「サンプルリターン」に、諸外国も追随し始めた。米航空宇宙局は10月、小惑星での試料採取に成功した。今月には中国が月面での物質採取に挑んだ。
宇宙を知ることで人類の活動の地平が広がる。中でも無人探査は日本の独壇場だ。蓄積した知見を十分に生かせる。海外とも連携し、さらに野心的な計画に挑んでもらいたい。
からの記事と詳細 ( 社説:はやぶさ2の帰還 人材育てる挑戦続けたい - 毎日新聞 )
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科学&テクノロジー
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