
埼玉県内で2021年上半期(1~6月末)に起きた特殊詐欺事件での検挙件数は285件と、統計の残る2005年以降で最多だったことが、県警のまとめでわかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で仕事を失い、「闇バイト」などと呼ばれるサイトに応募して、被害者から現金やカードを受け取る「受け子」になってしまった容疑者も複数いた。
県警は「詐欺グループの一員になってしまう危険性がある。収入が減ったからといって、安易にサイトに応募しないでほしい」と呼びかけている。
「犯罪だと気づいていたが、金ほしさにやってしまった」。今年1月、県内の高齢女性からキャッシュカード1枚をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕された無職の男(当時27歳)はそう供述した。
捜査関係者によると、男は日雇いの仕事を転々としていたが、コロナ禍で失職した。「これでは家族を養えない」。SNSで仕事を探していると「高額バイト募集中」という書き込みを見つけた。メッセージを送信すると「荷物を受け取る仕事です」との返答。その後、「銀行の職員を名乗ってこの家に行ってください」「最近は警察に捕まっていません」と説明された。金融機関の職員を装って女性からカードを受け取ったが、近くの駅前で警戒していた警察官に職務質問され、逮捕された。
男は「相手とのやり取りはSNSのメッセージだけで一度も会ったことがなく、顔や声も知らない」と話しているという。
男が応募したようなサイトは「闇バイト」と呼ばれ、特殊詐欺の受け子や、だまし取ったカードから現金自動預け払い機(ATM)で現金を引き出す「出し子」などを勧誘する。特に昨年以降はコロナ禍の影響で仕事を失った人や、アルバイトができない大学生などがスマートフォンでサイトを検索し、「文字通りアルバイト感覚で応募して犯罪に手を染めてしまうケースが多い」として、県警が警戒している。
県警によると、21年上半期に確認できた特殊詐欺事件は、容疑者の検挙に至らないものも含めて494件に上り、前年同期に比べて20件増えた。
ここ数年は減っていた、息子や孫などをかたって現金を要求する「オレオレ詐欺」が235件(前年同期比88件増)と、約半数を占めた。特殊詐欺の手口は、現金などの受け取りの際に顔を見られたり、あらかじめ通報されて逮捕されたりする危険性があるオレオレ詐欺は一時は減り、ATMで被害者に送金させる「架空請求詐欺」などが主流になっていた。
だが、ATM送金額に制限があり、だまし取れる金額が限られる架空請求詐欺に代わって、上限のないオレオレ詐欺が再び、中心になりつつある。4月にはさいたま市の70歳代の女性が、長男をかたる男らからの電話に応じ、現金4351万円をだまし取られた。
闇バイトなどを通じて受け子のなり手が増えたことも、オレオレ詐欺への回帰の要因になっている。詐欺グループにとって受け子は「使い捨ての駒」。仮に受け子が逮捕されても「顔も知らない指示役には捜査の手が届きにくいと、詐欺グループは思っているのでは」と、県警はみている。
捜査関係者は「受け子にとどまらず、指示役や詐欺グループの中心人物まで、徹底的に摘発を続ける」としている。
からの記事と詳細 ( 「荷物を受け取る仕事です」高額バイト応募した男、仕事の説明受け「最近は警察に捕まっていません」 - 読売新聞 )
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