福島第1原発の処理水放出をめぐっては、中国や韓国の野党、国内の一部勢力などが反対している。夏にも放出開始とされるが、科学的な知見を無視して反対を続ける背景は何か。
まず、「汚染水」と「処理水」は異なることを確認しておきたい。「汚染水」は、多くの放射性物質を含み、事故後に原発建屋内で発生したものだが、「処理水」は、ALPS(多核種除去設備)などを用いて浄化処理を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質について環境放出の際の規制基準を満たすまで浄化した水だ。一部のマスコミは意図的なのか、両者を混同した記事が多かった。
問題があるとすれば、除去しにくいトリチウムだ。除去しにくいのは一般的な水素と同じように酸素と化合して水分子を構成するからだ。実際に身の回りでは水分子に含まれる形で存在するものが多く、大気中の水蒸気、雨水、海水、水道水にも含まれている。
トリチウムは放射線の一種であるベータ線を出すが、エネルギーは非常に弱く、空気中を5ミリしか進むことができないため紙1枚で遮蔽が可能だ。また、トリチウムを含む水は、生物学的半減期が10日で、体内に取り込んだ場合も速やかに体外に排出され、特定の臓器に蓄積することもない。なお、物理的半減期も12年と短い。
このため、韓国や中国を含め世界中の原子力施設から、福島の処理水より高濃度のものが現に放出されている。それによる健康被害は報告されていない。ここまで説明すれば、科学的な問題のないことが分かるが、さらに念には念を入れ、政府はIAEA(国際原子力機関)の専門家らにも安全性の検証を要請している。
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