思いがけない大発見。
太陽の秘密を解き明かすべく2018年に打ち上げられたNASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が、太陽ではなく金星の意外な姿を捉えました。
画像の左端に写っているのが金星で、全体的に白くモヤモヤっとしています。これは金星が分厚い硫酸の雲に覆われているから。晴れることのない雲に覆い隠され、本来なら地表の様子までは見えないはずなのです。ところが中央に写っている大きな暗い影はなんとアフロディーテ大陸と呼ばれる高地帯!
見えないはずの地形がなぜ見えてるの?と驚いたNASAが調べてみたところ、どうやらパーカー・ソーラー・プローブに搭載されている広視野カメラが可視光線だけではなく赤外線に近い波長も捉えられるらしいことがわかったそうです。超ハイテクな宇宙開発分野でも、うれしい誤算ってあるんですね。
期待以上の性能を発揮
ことの発端は2020年7月11日、パーカー・ソーラー・プローブが軌道修正のために行った3度目の金星スイングバイでした。金星の地表からおよそ1万2,380kmの距離にまで近づいたところで広視野カメラ「WISPR(Wide-field Imager for Parker Solar Probe)」を使って金星をパシャリ。こんなに美しいイメージを捉えました。
WISPRには可視光の波長で太陽のコロナを観測するための光学望遠鏡がふたつ搭載されています。なので、可視光線を使った観測では金星の雲しか見えないだろうと誰もが思っていたのに、「WISPRのカメラは雲を突き抜けて金星の地表まで捉えたんです」とWISPRのプロジェクトサイエンティスト、Angelos Vourlidasさんは話しています。
どうやって?同じくWISPRプロジェクトのチームメンバー、Brian Woodさんによれば、どうやら金星の表面からの熱放射を捉えた結果だったようです。
可視光線に限らず、近赤外線も観測できる?
ヒントはJAXAが2010年に打ち上げた金星探査機「あかつき」にありました。
WISPRが捉えた画像は、あかつきが近赤外線の波長で観測した画像にとてもよく似ているとWoodさんはNASAのプレスリリースで語っています。
赤外線を使って観測すると、熱放射を捉えることができます。実際、今回映し出されたアフロディーテ大陸は金星でもっとも大きな高原地帯で、地表での温度がほかの場所と比べて摂氏30度ほど低いことが知られています。そのため、温度が低いぶん熱放射も少ないので、今回の撮影ではアフロディーテ大陸だけ暗く見えたと考えられるわけですね。
WISPRもあかつき同様に近赤外線の波長を使って観測できるキャパシティを持っているのであれば、今後パーカー・ソーラー・プローブが挑むことになる太陽探査ミッションにおいても大いに役立ちそうだと期待されています。具体的には、太陽のコロナ以外にも太陽のまわりを漂う宇宙塵の観測が可能になるかもしれないそうです。
NASAの科学者にとっても想定外だったWISPRの感度。太陽に接近しつつも「本番」に向けての調整が進みます。
ちなみに、金星の表面に見える細かい引っかき傷のように見えるのは宇宙線粒子。また、金星の縁が明るく輝いて見えるのは「大気発光」と呼ばれる現象で、天文学辞典によれば「太陽からの紫外線などにより励起された大気上層部の分子や原子の発する光」なのだそうです。
からの記事と詳細 ( NASA「撮れるはずのない金星の画像が撮れちゃった」 - GIZMODO JAPAN )
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科学&テクノロジー
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