今のご時世、「銀行の預金口座にお金を預けておくだけでは金利もほとんどつかないし、老後資金を貯めるためにはビジネスパーソンも資産運用をしなくちゃ!」とはよく聞く話。でも、いったい何から始めたらいいのか、いくらあれば安心できるのか、よくわからない……という方も多いのでは? そんな資産運用迷子になっている投資初心者のビジネスパーソンに向けて、ファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんに、資産運用を始めるにあたって知っておきたい基本の考え方と、iDeCo(個人型確定拠出年金)など税優遇のある制度の活用法などについて聞きました。(本稿は2022年11月2日に開催した「長期でお金を育てる!ビジネスパーソンのためのコツコツ投資実践法セミナー」からの抜粋記事です)
購入すべき商品を選ぶコツ
では、具体的にどういう商品を購入したらいいですか、とよく聞かれます。私がいつもお答えするのは「商品から入らないほうがいい」ということです。
まずは、投資対象(カバーする範囲)から考えてみてください。たとえば、1本で日本を含む全世界の会社の株を持てるような投資信託がいいのか、あるいは日本株に関しては個別株を持っているから、日本を除く世界の株に投資をするような投資信託を持ったらいいのか。
投資対象が決まったら、たとえばインデックス投信の場合だと、同じ株価指数に連動するタイプのなかで、なるべく手数料が低く、残高が安定的に増えているようなものを選ぶ……そういう順番で考えていっていただきたいです。
もう一つ、今のように相場が大きく変動するような状況になると、投資信託であっても価格が大きく変動するので、怖くなって投資をやめてしまう方もいらっしゃるんですね。これは非常にもったいない。株価指数に連動する投資信託といっても、株価指数に投資をしているわけではなくて、その先にきちんと働いている人や企業があるわけです。
たとえばMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動するタイプの投資信託を1本保有すると、世界の47カ国約3000社にまとめて投資をすることができます。投資先の上位を見ると、アップル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、マイクロソフトといった、皆さんが日常生活で使っているような商品・サービスを提供するグローバル企業が含まれています。指数が多少変動したとしても、それらの企業がいきなりなくなるわけではありません。お金の行き先をイメージするだけで、ちょっと怖さがやわらぐのではないでしょうか。
そして、せっかく投資信託の積み立てをするなら、税優遇のある制度を優先的に活用していただきたいです。勤務先に企業型の確定拠出年金がある方は、会社がせっかく掛け金を出してくれるわけですから、その掛け金を有効に使って投資信託で長期に分散投資をしていくのがいいでしょう。企業型の確定拠出年金がない場合には、個人でiDeCoに加入をする、つみたてNISAを活用するという手もあります。自営業の方は、それらに加えて小規模企業共済といった制度も活用していただきたいです。
活用の選択肢が広がってきたiDeCo
最後に、簡単にiDeCoの説明をしましょう。iDeCoとは公的年金に上乗せをして、自分で老後資金をつくっていく制度です。加入をして掛金額を決め、定期預金や保険、投資信託などの商品からどれを買うか(複数の商品を持つ場合は配分割合も)決めて、あとは長期でコツコツ基本は毎月買い付けていく。60歳以降に一括か分割、両者の併用で受け取る仕組みになっています。老後資金用ですので、原則60歳まで引き出せないというのがデメリットでもありますが、私は長期で資産をつくっていく前提なら、それはメリットでもあると思います。また、運用益に対して課税されないので、効率的に運用できる点もメリットです。
そう考えると、期待リターンの高いものを非課税の箱で運用していくほうが効率的です。できれば投資信託で運用しながら、受け取りが近くなってきたら定期預金や値動きが小さめの投資信託預け替えることもできますので、柔軟に運用しながら60歳以降まで運用を続けましょう。
また、iDeCoに関しては加入年齢の上限が60歳まででしたが、2022年5月から、国民年金に加入をしていれば原則65歳まで加入できる、つまり掛金をより積み上げていくことが可能になりました。そして、22年10月からは企業型確定拠出年金に加入している方も原則iDeCoに加入できるようになりました。企業型の確定拠出年金に加入している方の中には「自分はiDeCoにいくら加入できるのかわからない」という方がいらっしゃいます。その場合、企業型の確定拠出年金の加入者サイトにログインすると、ご自身のiDeCoの拠出可能見込み額が記載されているで、確認してみてください。
そして、受け取り方の選択肢も広がっています。従来60歳から70歳になるまでの間で受け取りを開始する、ということでしたが、それが75歳になるまで運用を継続できるようになりました。それぞれの働き方やライフスタイルに合わせて、受け取り始める時期を選ぶことができます。このように、iDeCoはより使いやすくなってきていますから、この機会に勉強していただいて、ぜひ有効に活用していただきたいです。
<前編はこちら>
竹川美奈子(たけかわ・みなこ)
LIFE MAP,LLC代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト
出版社や新聞社勤務などを経て独立。2000年FP資格を取得。取材・執筆活動を行うほか、投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)、マネープランセミナーなどの講師も務める。「一億人の投信大賞」選定メンバー、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」幹事などを務め、投資のすそ野を広げる活動に取り組んでいる。『こんなときどうする? どうなる? Q&A 3つのNISA 徹底活用術』(日本経済新聞出版)、『新・投資信託にだまされるな!』『改訂版 一番やさしい! 一番くわしい! はじめての「投資信託」入門』(以上、ダイヤモンド社)ほか著書多数。
著者からのメッセージ
日本で2001年10月に確定拠出年金制度(DC)が導入されてから20年が経ちました。制度がスタートした当初は批判的な声もありましたが、企業型DCとiDeCoを合わせると加入者は1000万人に迫り、利用する人は着実にふえています。
フィデリティ・インスティテュートがDC制度施行20周年に合わせて実施した「確定拠出年金1万2000人意識調査」(うちDC加入者は約3000人)によると、4割の人が「運用はうまくいっている」と回答しており、「運用はうまくいっていない」と回答した人はわずか1割でした。しかも、投資信託で運用している人は、元本確保型商品で運用している人と比べて「運用がうまくいっている」と回答した割合が約2倍多くなっています。この20年、リーマン・ショックなどもありましたが、長期的にみれば株価も順調に上昇したため、一定のリスクをとった人が報われたといえるでしょう。
一方で課題もあります。前述の調査では制度やしくみが「わからない・知らない」と回答する人が少なくないことです。企業型DCでは約4割の人が事業主掛金の額を知らず、5割の人が転職するときの移換について理解していません。結局、しくみが複雑なことがDC制度の普及を妨げる要因になっている、ともいえます。今回の改正で加入できる年齢がのび、受け取り方の選択肢が広がり、さらに企業型DC加入者は原則iDeCoに加入できるようになります。転職や独立、二拠点生活などライフスタイルの多様化を踏まえ、制度はよりシンプルに、加入や移換時の手続きもカンタンに、早く、デジタル化なども進めてほしいと思います。
とはいえ、せっかくある制度です。とくに国民年金の第1号被保険者の方や企業年金のない会社員の方にはぜひiDeCoを知って活用していただきたいと思います。
本書はiDeCoについて解説した本ですが、制度を知ったうえで「加入しない」「つみたてNISAを優先的に使おう」という選択もあっていいでしょう。要は、平均値やモデルではなく、「自分はどうなのだろう」と調べて行動することが大切です。
本書をきっかけに、いま一度「自分にとって満ち足りた(心落ち着ける)生活とはどういうものなのか」「将来、どこで、どんな人たちと、どんなふうに暮らしていきたいのか」をぜひ考えてみてください。今の自分が「未来の」自分をつくる――そう思って、日々を大切に生きたいものです。
■書籍紹介
◆ロングセラーの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』』の改訂版が、ついに発売!!
◆基本的なしくみからメリットや留意点、金融機関・商品の選び方、受け取り方まで完全網羅!
◆大幅節税しながら老後資金を今すぐ準備!
iDeCoとは、ひと言でいえば、「節税しながら老後資金を準備できる制度」のこと。自分でお金をだして、預金や投資信託などで運用していき、60歳以降に運用してきたお金を受け取るしくみ。
運用益が非課税になるだけでなく、掛金を払ったときも、税金(所得税・住民税)が安くなる。私たちが老後に向けてコツコツ資産をつくっていこうと考えたとき、ぜひとも活用したい制度です。
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◆目次
■第1章 iDeCoってなに?
・老後を支えるのは3つのお金
・iDeCoの流れ
・iDeCoに加入できる人は?
・iDeCoの加入可能年齢が拡大(2022年5月1日から)
・掛金はいくらまで払える?
・企業年金のある会社員と公務員は統一(2024年12月から)
・掛金の払い方
・預金や保険商品、投資信託から選んで運用
・60歳以降に運用してきたお金を受け取る(給付)
【コラム】 マッチング拠出とiDeCoのどちらを選ぶ?
■第2章 iDeCoの税制メリットを賢く使う!
・iDeCoのメリットとは?
・掛金を払うと、所得税・住民税が安くなる
・運用している間の「利益」に税金はかからない
・受け取り方しだいで税金が変わる!
【コラム】 自営業は付加年金、小規模企業共済とiDeCoの組み合わせが最強
■第3章 iDeCoをこう活用する
・iDeCoで運用できる商品
・iDeCoでは期待リターンの高い商品で優先的に運用
・運用期間を長くとれる人は株式を中心に
・バランス型ファンド選びのポイント
・ミニコラム 運用する商品を選ばないとどうなるの?
・過去に積み立てをしていたらどうなったか?
・運用を始めたら、あとは淡々と積み立てる
・配分割合の変更とスイッチング
・出口を意識。受け取り時期や受け取り方法に応じた運用に
【コラム】自営業は付加年金、小規模企業共済とiDeCoの組み合わせが最強
■第4章 金融機関はどう選べばいいの?
・金融機関に口座を開設する
・(1)口座管理手数料
・(2)商品の品ぞろえ
・(3)利便性やサービス
・ポータルサイトを活用する
・〈主な記入機関比較〉
【コラム】 金融資産をまとめて管理、育てていこう
■第5章 運用してきたお金をどう受け取るか
・老齢給付金を受け取る方法は3種類
・給付時の税金について
・【ケース1】同じ年に複数の退職金を受け取った場合
・一定期間内に受け取ると退職所得控除の枠は共有される
・【ケース2】前年以前19年内にiDeCoの一時金を受け取った場合
・【ケース3】一定期間をあけて受け取る場合
・年金形式で受け取る場合の税金はどうなるか
・自分にとっての全体最適を考える
・結局、どうしたらいいの?
【コラム】 公的年金を繰り下げ、私的年金を中継ぎで利用
■第6章 iDeCoについてのQ&A
Q1 口座はどのように申し込めばよいですか?
Q2 どんな手続きをすれば税金が安くなるの?
Q3 金融機関(運営管理機関)をあとから変更できますか?
Q4 企業型DCに加入していましたが、
運用してきたお金はどうなりますか?
Q5 「自動移換」されてしまった資産があります。
もうiDeCoには加入できないのでしょうか?
Q6 還付って何ですか?
Q7 iDeCoにかかわる機関が破たんしたらどうなるの?
Q8 スイッチングで投資信託を解約しようとしたら、
「口数」が出てきたのですが……
Q9 掛金を5000円にすると、投資信託は1本しか選べないのですか?
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からの記事と詳細 ( iDeCoで商品選びに困ったら知っておきたい「2つの順番」 - ダイヤモンド・オンライン )
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