「この見積額は高いのか安いのか」「本当に希望するシステムが出来上がるのか」「提示したスケジュール通りに果たして完成するのか」――。
情報システムの発注に当たっては、ベンダーから事前に「見積もり」を受け取ることになる。だがその見積もりを適切に評価できないと、このような不安が一向に拭えないほか、実際のプロジェクトも頓挫する恐れがある。ではベンダーから受け取った見積もりをどう評価すればよいのか。実はこのとても重要なことが、広く知られていないケースが多い。
今回は、ベンダーから受け取った見積もりをどう評価すればよいか? そのポイントについて解説する。
「見積もり」にはタイミングがある
そもそも「見積もり」といっても、そのタイミングによって位置づけが大きく異なる。まずこの点をしっかり理解しておかないと、正しく評価するのはとても困難だ。
ITプロジェクトの企画からカットオーバーまでの見積もりを考えてみよう。図1に、ITプロジェクトの主な見積もりのタイミングと目的を示した。見積もりは、「試算」「概算」「詳細」のように修飾語をつけてタイミングを表す。
試算見積もりは、企画段階で行う。案件の優先順位をつけ、年度や期単位での予算を作成するために実施する。
概算見積もりは、要件定義の段階で行う。ベンダーに発注する場合、ユーザーは、RFP(Request For Proposal:提案依頼書)を作成し、ベンダーに提案を求める。ユーザーは、提案内容と見積もりを評価して発注するベンダーを決める。
詳細見積もりは、基本設計完了後に行う。詳細設計以降を発注するベンダーを決めたり、概算見積もりとの差異を整理したりするために実行する。
このように見積もりのタイミングによって目的が異なる。今回は、ベンダーが決まる概算見積もりの評価を対象にする。
当然だが、試算、概算、詳細と進むにつれて見積もり精度は高まる。見積もり精度に影響するのは、見積もりへの入力情報の質、実績値や経験則の蓄積、個人や組織の見積もり能力である。
図2に、概算見積もりの流れをもう少し詳しく示した。ユーザーのIT部門は、利用部門とともに定義した要件をRFPにまとめ、提案を依頼するベンダー(複数社の場合あり)に引き合いを出す。RFPを受け取ったベンダーは、提案活動の一部としてそのシステムを実現するための費用などを見積もり、提案書と見積書、見積もり前提条件書を作成する。
提案書は、RFPに対する回答、つまりベンダーとしてのソリューションを記す文書で、解決策や実現方式を示す。見積書には、提案価格とその内訳など、基本的な事項を記す。その根拠などの詳細は、見積もり前提条件書に記述する。
これら3つの文書は通常、提案書として1冊にまとめ、ユーザーに提出する。提案書を受け取ったユーザーは、その内容を評価し、発注するベンダーを選定する。選定したベンダーには内示を出し、契約を結ぶ。契約締結で概算見積もりは完了し、プロジェクトの計画フェーズに入る。
ここで注意したいのは、RFPに書かれた情報が見積もりの主な入力情報となることだ。ユーザーが提示するRFPの質が悪いと、ベンダーに見積もる能力があっても精度の高い見積もりは期待できない。
概算見積もりで、価格に付随してプロジェクトの大枠が決まる。従って、プロジェクトの成否に大きく影響を与える。ただ、まだ要件定義の段階なので不確定要素も多い。ベンダーには、実績値や経験則に基づいて論理的、合理的に見積もることが求められるが、同様にユーザーにもそれを評価するためのスキルが求められる。
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